
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
「大分、参ってるじゃないか。今にくたばる顔だなぁ、こら!」
男の一人が私の顎を鷲掴みにして、喉元から拳を突き上げた。
「月のものが来ない……と、オーキッド伯爵様がイリナ様を医者に診せたところ、生殖機能が停止していたらしい。心当たりはあるか?」
「そうか。間違いなく壊せていて安心したよ。くだらない男に孕まされたんじゃなくて」
「初めから伯爵様の家系を絶やすつもりだったのか!ただでは済まないぞ、イリナ様がお世継ぎを産めなくなるということは、もう妹君しか……っ」
「ああ、アレットもやっておけば良かったな。婚姻で国や家の安泰を繋ぐ、チェコラスの悪習だ。異常に母性とやらが尊重されて、オーキッドも正当な血筋の女は道具にされる。イリナだけはその餌食にならないようにしただけだ」
生まれ育った国にいても、自由があるとは限らない。あれがアレットの芝居だったとしても、チェコラスの女が個人の意思を押さえつけられてきたのは事実だ。
「神への冒涜だ……!謀反だ……!」
「おやめなさい」
役人達の肩越しに、一人の女が近づいてきた。
「ギャフシャ夫人!」
「オレリア様……お疲れ様です」
役人達が敬礼したのは、イリナがここの刑場で見せ物になった時、午前の執行を担当したギャフシャ夫人だ。
