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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音




 夜、リディ様が訪ねてきた。

 リディ様は、夕方、私がラシュレのことを話す前から蒼白な顔をしていた。とっくに彼女の処刑を耳にしたのかと思ったが、私の話に動揺した様子からして、知らなかったのだと思う。

 それなら何故、まるで通夜から帰ってきた人間のような顔をしていたのか。

 私が問い詰めても、良くも悪くも彼女は頑固なところがある。意思の固い姫君に、私は答えを求めるのをやめた。


「イリナ、あのね……」


 また、何か言いかけて口を噤んだ。

 私は化粧水を叩きながら、アフロディーテの化身とも見える姿を眺める。

 みすぼらしい格好を強いられていても、真珠の肌にまばゆい金髪、愛くるしい顔──…指先に至るまで洗練された身のこなしは、リディ様の生まれながらの品格を少しも減衰させない。


「リディ様。そんなに思わせぶりなお顔ばかり見せられては、余計に気になります。私はリディ様がここにいて下さるだけで満足です。お話しになって大丈夫と判断されるまで、お待ちします」

「そう、……。ごめんなさい、有り難う。イリナ。ごめんなさい……」


 それからしばらく、リディ様は顔を俯けていた。そして口を開いた。

 さっきまでの泣きそうな顔とは一変して、リディ様から強い決意を感じる。

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