
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
「イリナ。コスモシザへ戻るわ」
「え」
「もしもの時に備えて、騎士団の皆さんが身を隠すことになっている場所。案内してくれるかしら」
それは、今、こんな時間に行くということか?夜は大分、更けているのに。
「リディ様、こんな時間……馬車も……」
「こんな時間だから、行けるのです。今なら誰にも見つからないわ。イリナに強制はしない。イリナはこの屋敷のお嬢様。やっと帰ってこられたんだもの。私の都合で、大事な貴女を巻き込めない」
「何をなさるおつもりですか……」
恐る恐る問うた私に、リディ様が話し出す。
ローズマリー家の王権、土地、女神を取り返すこと。コスモシザの民の権利を奪還して、チェコラスの支配を打ち砕くこと──…そのためにリディ様自らが前線に立ち、残った兵達を煽動するという。
