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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音


* * * * * * *

 独房を出された私は役人達に拘引されて、煉瓦造りの回廊を歩いていた。受刑者達が収容されるはずの場所には、かなりの空きが見られる。

 久し振りに深い眠りに就けたあとで、意識は冴え渡っていた。

 外は、物見客の姿がまばらにあった。

 死の瞬間に立ち合いたがる人間が熱心に前列を押さえたがるのは、よくあることだ。それにしても朝日も差さない暁暗から貴族達まで見えるのは、彼らが対岸の火事視出来る刺激だけを求めていないのが分かる。


「俺達は騙されていたなんて!お前が騎士団の頭だったのか!この間は、よくもチェコラスの女にカムフラージュさせやがって……お前も鞭打ちを受けろ!!」

「ただの死刑なんておかしいわ、この戦で私達の生活がどれだけ苦しくなったか……」

「公爵様は何をお考えなんだ……俺達の苦しみは何だったんだ……その女を嬲り殺せ……心臓を引きずり出せ……一秒でも長く苦しませろ!!」


 怒り狂った群衆から、石が投擲されてきた。役人達が彼らを制すると、いっそう抗議の声が高まる。

 私は戦犯ということになった。毒もそれなりに苦しいというが、先月のイリナを凌ぐものを期待していたらしい彼らからすれば、その罪状が非難を呼んだのは明白だ。


「耳障りですが、もうしばらくのご辛抱を」

「気にしてないです」


 ギャフシャ氏の囁きに、私は首を横に振る。
 夫人と同じで戦や政に無関心の彼は、さっきも私に気の毒だと口走り、役人達に睨まれていた。


 席取りの観衆が集うのとは別の方角がざわつき出したのは、突然のことだ。

 収容所の裏手から、武装した兵達の群れが突進してきた。

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