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戦場のマリオネット

第6章 乙女は騎士の剣を掲げて


 コスモシザの王立資料館の地下の床下に、その扉は仕掛けられていた。開館時は絨毯が覆っているというが、更に階下への階段がこんなところに隠れていようとは、見せられなければ気づかない。

 騎士団が、コスモシザに万が一のことがあった時、潜伏するための場所だという。略式の生活空間になっており、今は精鋭部隊も合わせてざっと五十人いるが、広さには十分な余裕があった。

 イリナを捕獲した時、ジスランや私は騎士団にはまだ何かあると踏んでいた。公にはなっていない、切り札にもなり得る何か。

 それがこの場所だったのだ。


 馬を繋いで降りてくると、リディは私にシャワーを勧めた。手当てするにも乾いた血などで傷口の特定が困難らしく、私も一週間放置していたのが不快だったため、先に身体を流すことにした。

 脱衣所に出て下着をつけると、ノックとリディの声がした。
 彼女が運んできたのは、オーキッドの屋敷に置いてきたはずの私の洋服だ。そう言えばイリナが袖を通していたのも見覚えがある。


「クローゼット、勝手に漁ってごめんなさい。イリナは、ドレスで馬に乗るわけにはいかなかったから……」

「有り難う」


 ここに来るまで、私はギャフシャ夫人に着せられたものを身につけていた。

 リディは私の後方に回ると、薬箱を脇に置いた。

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