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戦場のマリオネット

第6章 乙女は騎士の剣を掲げて



「届くところは、出来る?背中は私が」


 私は薬を受け取って、塗布していく。

 脱衣室に入った瞬間リディが顔を歪めただけに、私の傷は、温室育ちの彼女に任せるには気後れするものがあった。


「イリナをまた怒らせてしまったわ。でも、彼女に見せた方が酷だと思うの」

「放っておいても、一生このままじゃないから……」

「自然に任せたら、何年かかるか分からないでしょ。開きそうなところは、医療用テープで押さえておくわね」



 脱衣室を出ると、イリナが駆け出してきた。
 コスモシザの軍人達の目があるためか、あの日ほど露骨に再会を意識する風ではないにしても、会いたかったと言いながら、私の手を握ってくれた。

 イリナが用意したという苺のサンドイッチは、一週間断食した胃に堪えた。紅茶で流し込めという彼女に無理を訴えると、周囲を見回し、彼女はそれを口に含んだ。


「イリナ、何……んっ?!」


 私を塞いだ彼女の口から、苺とカスタードとパンがねじ込まれてくる。


「…………」

「貴女の寄越してきたメイドに、私も食事を押し込まれたことがあるの。咀嚼してあげただけ、マシだと思って」


 幸福とは無縁だった、イリナとの日々。それでも懐かしく思うのは、知らずに私が、安らぎを見出していたからだろう。

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