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戦場のマリオネット

第6章 乙女は騎士の剣を掲げて



「コスモシザとチェコラスは、故意に争い、傷つけ合うことを望んだのではありません。コスモシザは文化的にも発展し、肥沃な土地です。近隣が目をつけるのも当然のこと。時の流れや情勢が、招いた不幸です。彼女達が、たった一つしかない選択肢を選ばされたのも。私も自由を奪われました。城も両親も、国民達も奪われました」

「リディ様……」

「人の手ではどうすることも出来ないことがあります。そうした状況に陥った時、何をすべきか、周りがどうにもならなくても、自分自身はどうにでも動けると私は思う。憎しみを否定はしません。貴方がたの悲しみは、私の悲しみでもあるから。最近、私は人の手ではどうすることも出来ない不幸に、目を伏せて耳を塞いでいるだけの日々を過ごした。そんな日々を過ごしてみて、耐えることがおかしいと思った。私は何故、何もしないで耐えているのか……と」


 リディがイリナに視線を遣った。

 イリナはリディを意味深長に見つめ返す。


「チェコラスを陥落させるのは、支配のためではありません。失敗しても構わない。毎日耐えて暮らすくらいなら、足掻きます。それで私が首を取られても、悔いはありません。でも奇跡を起こせたなら、私はこの土地を変える。悲しみを断ち切ります。チェコラスに住む人達にも、何かしら不自由はあるでしょう。私が女王になった暁には、些細なところから改善していきたいと思っています」

「リディ様が……女王に……」

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