
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
コスモシザへの侵攻は、私が生かされてきた理由だった。神より信じた正しさだった。
チェコラスに義理はなくても、強制された存在意義でも、私にはこの二十一年間を覆せるだけの覚悟が決められない。
そうした躊躇いを、リディが危険だという建前にくるんだ私に、イリナは仕方ないと言って頷いた。
「ラシュレが心を決められないのは、分かるから。私だってイリナ様の騎士になるためにコスモシザにいた。積み重ねてきたものが壊された……あの失望は、例えようもなかったわ」
「そうね。無理を言ってしまったわ。私は、イリナとラシュレが会えただけで嬉しいから……さっきのは、忘れて」
リディが戻って、コスモシザ軍は士気を上げている。
私がイリナと話していた間、彼らと話してきた彼女の決意は、より確かになっていた。
「リディ様。騎士団の指揮、私にお任せ願えませんか」
「イリナは危ないわ。あんな物を打たれて、ほとんど私と変わらない……剣だって振るえるか」
リディが彼女を連れて行けないのは当然だ。
反論も峻拒すると言わんばかりのイリナの面持ち、だが実際、彼女は筋力を衰退させられている。長期に亘る禁足で、単純に体力も落ちている。
