
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
「私の……。ねぇ、お父様とお母様はお元気?どこかへちゃんと避難されている?会いたいわ」
「イリナ様、それは……」
兵士が口ごもったのとほぼ同時、リディの薔薇色の頬にしずくが伝った。
「うぇ……ひぅ……」
毅然と背筋を伸ばしていた王女の顔が、丸めた紙のように歪む。はらはらとこぼれ落ちる涙の意味を察したイリナの顔が血の気を失くす。
また隠し事をしていたことを詫びるリディ。それは優しさだ。イリナを余計に追い詰めるだけの。
そんなリディの、私も共犯だ。
アイビー家の人間は、既にチェコラスの軍によって根絶やしにされたあとだ。昨日、私はギャフシャ夫人に聞かされた。
