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戦場のマリオネット

第6章 乙女は騎士の剣を掲げて



「あんなに綺麗だったのに」

「リディにもそんな顔させちゃった。お嬢様達にそういう目で見られたのは、人生初だ」

「ラシュレ?!……もう、良いわ。私なんて、どうせ貴女の遊び相手以上になれないんでしょ。私、少しは悪いと思ったのに。アレットにも言われたわ、私がいるから貴女が追い出されたんだって。私のせいだって」

「違うよ」

「…………」

「イリナと私が、こんな役目を負った証。この傷は、二つの国で起きた悲しみの重み。リディが断ち切るって心に決めた、悲しみの。こんなかたちで収束しても、いつか繰り返す。遠い未来、また私達みたいな子も出てくるかも知れない。それを変えると言ったリディを、私は信じたい」


 私でなくても構わなかった。イリナでなくても。ただ恨みの遣り場がなければ彼らの痛みはどうしようもなかったのだと、ここ連日で身に染みた。


「でも私は」


 イリナが私の手を取って、指をじゃれつかせてきた。


「この運命に感謝している。酷くて理不尽で、最悪な定め。何も知らないであの屋敷で生きていたら、私はラシュレに逢えなかった」

「イリナ……」

「あの日、あんなこと言ってごめんなさい。悲しかったの。混乱もしていた。私の気持ちは、明日、貴女がリディ様を連れ帰ってきてくれたあとに聞いてくれる?」


 私は頷く。リディを必ず連れ帰ると付け足して。

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