
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
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リディや私を取り逃したチェコラス軍は、捜索をコスモシザにまで広げていた。
私達の待機していた路地裏の広場へ、視察に行かせた隊員達が戻ってきた。
「正面ルートは塞がれています。森もマークがないとは限りません。やはり一端、日を置いて、やつらを油断させるべきでは」
「延ばせばその分、市民達に危険が及ぶわ。私がいなくなったことで、お父様やお母様にも……」
リディの声が、消え入りそうに小さくなる。彼女の不安に曇る顔に、彼女を慕う兵士達まで眉を下げる。
「大丈夫……ごめんなさい。それにあの避難所だって、いつ暴かれるか分からない。国境はあってないようなものだもの。狙うのは公爵だけ。出来れば被害も最小限に抑えたいの」
「森の警備は見かけなかったということ?」
私が問うと、今しがたの騎士隊員が頷いた。
納得はいく。チェコラスには、森の地理に明るい兵士がほぼいない。
