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戦場のマリオネット

第1章 辱められた矜持



 惨状は足場に限らない。長い歳月を経て蓄積した水滴が、時折、天井からしたたってくる。白いブラウスに薄いシミが付いたところからして、避けるに越したことはなさそうだ。こういう場所につきものの蜘蛛の巣は無論、元は何だったのか確かめるのも躊躇われる塊が、あちこちにこびりついている。


 ミリアムが塔だと呼ぶだけあって、ここは地上階も高い。しかし私達が向かうのは地下。

 電灯一つを頼りにして、階下へ潜れば潜るほど、足場も視界も心許なくなっていく。

 ようやく最下層へ降りきると、重厚な扉が構えており、乾いた飛沫が散っていた。


「ひっ……」


 私は、ミリアムの口を咄嗟に押さえた。

 彼女の戦慄には知らぬ振りをして、私は目の前の扉を開ける。


 かつて咎人の中でも悪逆の限りを尽くした人間が、ここに繋がれ、拷問の末に息絶えてきた。

 独房は、未だ罪の匂いが染みていた。

 中央に寝台が据えられていた。当時から交換された様子はない。寝台というより、粗末な立方体の石だ。

 そこに女が横たわっていた。

 女は裸体だ。

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