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戦場のマリオネット

第8章 救済を受けた姫君は喉を切り裂く【番外編】



「イリナの捕獲、監禁に異議はございません。彼女は憎きコスモシザの王室付き騎士団リーダー。その上、王と王妃の娘と叙任の儀式も済ませています。野放しにしていては、我々の脅威になりかねません」

「それゆえ利用する価値はある。イリナを野蛮な神トレムリエに背かせて、我が国教カトリックに改宗させる。それだけで、コスモシザの連中の打撃になる。あの国にとって、騎士団こそ神の国の象徴だからな、特にアイビー家は神聖視されている。戦力としても、味方に付ければ悪くない」

「拷問は避けて通れぬということですね」

「イリナが我々の要求を呑めば、いたぶってやるな。相応の待遇で迎えてやろう」


 父の顔色を窺って、一言も発言しない一同は、早くも議論を他人事として聞き流していた。

 実際、オーキッド家の所有する塔に入れられるイリナと王女の担当は、私を含む第五部隊の数名だ。そしてブリーズ。それ以外の顔触れは、彼女達の捕獲を終えれば、直接関わることがない。



 解散後、ブリーズが私を呼び止めた。

 イリナ・アイビーを狙った強襲は、二週間後に決まった。会議に呼ばれた軍人達は、汚れ仕事の任命を免れたことへの安堵をあからさまに顔に出して、各自の持ち場へ足を向けた。私も部下達を待たせていた。

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