
戦場のマリオネット
第8章 救済を受けた姫君は喉を切り裂く【番外編】
「んッは……ぁはっ……ああ……」
「ん、アレット……アレット……」
彼女の名前と、彼女を表す美しいという言葉。
私はそれらを交互にささめき、シーツに崩れた彼女の真横に片膝をかけて、身を低める。唇から顎にキスを移して、耳、首筋、喉にも唇で触れる。私の触れた部分から、まだ言葉を覚えていない幼児のような悲鳴が上がる。シーツを掴む彼女の片手を取り上げて、甲や指の付け根にもキスする。
私達姉妹のセックスは穏やかだ。まだ互いに遠慮している恋人達に倣った風な呼び水で、彼女を労る。
彼女の脚と脚の間の割れ目に口づけて、指を沈められさえすれば、彼女も私も満たされる。彼女が他の人間に許さない場所に私が触れて、私が他の人間より彼女を愛する。そのための名目が必要なだけだ。
その実、私はアレットを殺したいほど渇望している。
装飾品さながらの凹凸をつけた身体はみだりがましく弓なりになって、みずみずしい唇は、まるで成熟した雌の鳴き声を上げる。私を見上げる翠の目は計算高いまでに妖しく濡れて、全身に鼓動を広げたように、触れてもいない部分までたわむ。彼女の裸体は、私から正気を奪う。彼女への私の愛情が、暴かれたくない類の欲望に変わる。
彼女の膣内でふやけるのではないかというほど指を泳がせる時、奔放な水音がいくら立っても目立たないのは、それ以上に、彼女の声が歯止めを失くしているからだろう。
