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戦場のマリオネット

第8章 救済を受けた姫君は喉を切り裂く【番外編】



 頬やおとがいを撫で回した指を唇に移して、たった今まで舌で愛撫していた中に差し込む。脚と脚の間をまさぐる利き手と同様、左手も、彼女の歯の奥の柔らかな場所に呼び水を施す。
 

「ァッ……ああぁーッ……あっっ……」

「美しい……開口を強いられる女性の顔って、いやらしいと思われませんか」

「ああっ……ぁっ、ん!」


 夫人の胸が大きく上下し出すと、口の中の愛撫を止めた。私は、また利き手に専念する。


「ァゥっ……ゃだっ、アッそこぉ……アッああんっ!」

「ダメなら、やめます」

「待っ……待って、ぁッ……うぅく……っ」


 ダメじゃなくて、でも、でも、と、夫人が首を横に振る。

 何度か飛沫を上げた彼女は、シーツに形跡が残る懸念もしない様子で、私が指を抜く素振りを見せると、腰で追いかけてくる。

 私は、彼女の頭の天辺からつま先までの味を知る唇を、今一度その唇に乗せた。三十代半ばにしても熟れた唇の奥に、私自身の唾液を注ぐ。真新しい愛液を分泌し続ける潤みの内部を突きながら、彼女からも唾液を啜る。


「……アァっ、幸せ……イイぃ……とってもぉぉ……っっ」



 ありきたりな愛し方をした次は、夫人が持ち出してくる玩具を使うこともあれば、最も高貴な女に這いつくばらせて、アヌスをいじることもある。複数の貴族達と関係を嗜んでいる彼女は、家内や使用人の急な訪問を危惧する理由も持ち合わせない。彼女にとって、セックスは会話の一つだ。その会話に付き合う内、カーテンを透かしていた陽光は、幾分か昼間の鋭さをやわらげていた。

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