
戦場のマリオネット
第8章 救済を受けた姫君は喉を切り裂く【番外編】
かくいう私も、ある別件では感情に足を引っ張られていた。
アレットの勘繰りは的を射ていた。あの決定が下されてから、私は思案に暮れている。チェコラス夫人らが憂慮したよりもっと目先の問題が、妹にも分かるくらい、私の表に出ていたのだろう。
カキィィィィーーン……カンッ、カンッ!
「ぐァッ!!」
「たァアッッ!!」
正午を過ぎた訓練場では、入隊して日の浅い男とミリアムが切り結んでいた。
まだ十代の後輩に僅かな忖度もしないミリアムは、国内でも腕利きだ。剣に銃、格闘でも、彼女を負かせる軍人はごく稀で、日頃の職務も実直にこなす。
新参者の青年は、一分と持ちこたえなかった。尻餅をついてミリアムを見上げ、撥ねられた剣を場外へ取りに行くのも諦めている。
「お前はもう良い。自信のある者だけ相手を願う!」
数人の隊員達が名乗りを上げた。
彼らの中から、まずミリアムが呼んだのは、格闘家の家系の女だ。彼女の家門に受け継がれてきたという奥義をかわして、ミリアムが試合を掌握するところまで、時間の問題だった。彼女らが互角だったのは、同じ部隊にいたからだ。体技に長けた女が相手の癖をここまで把握していなければ、乱雑な力技に打ち砕かれていただろう。最終的に、ミリアムが彼女を背負い投げて勝負は決まった。
