
戦場のマリオネット
第2章 終わりなき責め苦
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可憐なブーケを聯想させられるピンクのドレス、贅の限りを尽くした衣装を引きずって、リディが階下層に降りてくるまで、随分な時間がかかったと思う。
歳は私達とそれほど離れていないようだが、昨日暗闇の中に見ていた時と変わらず、リディのあどけなさの残った顔立ちは、王族にありがちな余裕ともとれる気色を湛えて、ミリアムのあとに続いてきた。
囚人とは思えないほどの血色の頬が色を変えたのは、その目が、ある一点を映した時だ。
「イリナ!」
口を抑えてふらついたリディを、ミリアムがすかさず受け止めた。
「リディ王女……見ないで下さい、ご覧にならないで……」
「酷い……イリナ……何故こんなこと……」
血まみれの性器を露出させて、乳房も突き出した格好で宙吊りになった騎士から目を逸らすリディは、か弱い令嬢らしく全身を戦慄させていた。たった今まで伸ばしていた背筋は骨を抜いたようになり、ミリアムに凭れてほとんど立つ力をなくしている。
私はリディの頬を両手に挟み、イリナに向かせる。
「ちゃんと見て。リディ」
「うっ……」
「イリナを、君はあれだけ心配していた。ちゃんと生きているのを見せたくて、せっかく足を運んでもらったのに」
「無事だって……言って下さったじゃありませんか……」
