
戦場のマリオネット
第2章 終わりなき責め苦
私は手近な兵士の切っ先をよけて、利き手を狙う。彼らは小さく呻吟しても、手の亀裂にも構わず、リディの居場所を言えと凄んで、剣を繰り出す。
刃を受けとめて、私は攻めることに集中している男の懐に入り込み、左拳を腹に入れる。ここに彼女らはいないこと、チェコラスの要求を受けるなら王女は無傷で返すことを、耳に注ぐ。
「小国の分際が……!王女様を今お返ししてもらうまで、我々は命も惜しまん!」
「くっ……」
白刃と白刃の金属音と砂埃が、彼方の空を霞ませる。
熟達した剣裁きに応じていると、視界の端に、一人の兵士が乱戦の隙間を縫ってくるのが映り込んだ。
「ぐぉおおおおおっっ……」
私は剣を交えていた男の腕を捻じ上げて、斜め後方を突き進んできた雄叫びの主の腹を突き刺す。
「ぬぐうっ!!」
垂直に沈めた刃先を斜めに抜くと、腹に赤い亀裂の入った男は断末魔の呻きを上げて、ぼたぼたと地面に雨を降らせて蹲る。
「このっ……」
左腕に捕らえた男の首に、私は彼の味方の鮮血に汚れた剣を当てる。
