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戦場のマリオネット

第2章 終わりなき責め苦








 私を始め、各部隊のリーダー達も部下らに殺生を許可し、チェコラス城を月が飾り始めた頃、コスモシザの軍は退いた。ただし、撤退したのは主に騎士団で、収容所付近のあちこちに、勇猛な死体が転がっていた。

 死体処理の役人や軍医らが往来する広場を後に、私は収容所の医務室に向かった。私を狙った弾を受けたミリアムと、彼女に付き添わせたクロヴィスが、包帯を巻いて話し込んでいた。


「お疲れ様です、隊長。一件落着ですね」

「本当にしつこいやつらでした。この窓からよく見えていましたよ」

「お前も斬られたのか……」

「すみません。すぐ戻るつもりでしたが、力不足で」

「私の方こそ頼んで悪かった」

「当然のことをしたまでです。ラシュレ隊長が残られたからこそ、今日の襲撃はことなきを得ました。失礼ながら、女性の身でありながら、コスモシザの……若盛りの軍人どもも、貴女の前では歯が立たない」

「買い被りすぎだ、被害が多すぎる。それに、部下達まで守れないとは……」


 ミリアムの隣に腰を下ろす。

 さっきの出血が嘘のように今は顔色も回復しているのは、弾が浅かったからだろう。

 あの角度から私が弾を受けていた方が危なかったと回視して、ミリアムが笑った。

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