テキストサイズ

戦場のマリオネット

第2章 終わりなき責め苦


* * * * * * *

 二日後、私は議会の決定の下、イリナを国立収容所へ勾引した。

 町では度々、コスモシザの侵攻に否定的な市民らが、反対運動を起こしている。市民でなくても、先の襲撃で重傷を負ったチェコラス兵の家族の不満が高まったのもあり、彼らがイリナを引きずり出せとデモをしたのだ。


「ご無沙汰してます、ギャフシャさん。……ご主人は?」

「お久し振りです、ラシュレ様。主人は中で、玩具を磨いております。私は罪人が若い娘だとお聞きしたので、居ても立ってもいられなくて……。午前は私が担当しますの」


 厚い化粧に塗り固めた相好を崩し、鼻先に獲物をぶら下げられた獣のような目を細めてイリナを舐め回すように視線を這わせる婦人は、オレリア・ギャフシャ。処刑や拷問役の奥方だ。

 私は、後ろ手に枷を嵌めて首輪に繋いだイリナの手綱をオレリアに渡す。

 革バンドに視界を覆ったイリナはよたつきながら、肉づきの良い女の腕に収まった。


「随分、衰弱しておりますわね。お屋敷で嬲りものにしていらしたというのは、彼らの不満を抑えるための方便かと……」

「早く降参させるようにと、申しつかっておりますので」

「そうですか。私も一役買えるよう、尽力致します。戦争に興味はありませんが、この者のように若く美しい娘に残酷の限りを尽くして可愛がれる特権に目が眩んで、主人と結婚したようなものですもの」

「貴女もお人が悪い……」

「ふふ、若くて従順な娘がお好きなのは、ラシュレ様だって同じではありませんか。刑場へ出るまで、時間があります。少しこの子で遊ばせていただいても良ろしくて?」

「夕方には、こちらでまた身柄を回収します。死に至らせることはお許しが出ておりませんから、お手柔らかに」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ