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戦場のマリオネット

第2章 終わりなき責め苦


 連日の地下牢での虐待跡が、晴天に照射されていた。
 それには構わず、若い罪人の加虐に傾倒する執行人は、イリナの身体を撫で回して、つねって、通気孔の空いた厚手の布袋を彼女の頭ごと被せた。それから約二時間、観衆達に、石やゴミを投擲することを許可した。

 午後はギャフシャ氏が刑場に登った。昼休みの間も乳房を吊り上げられていたイリナの拘束を解いて、夫人より十歳下の男は丸太にイリナを抱きつかせた。

 手首を覊束して、腰と太ももをぐるぐると縄に固定されたイリナに、執行人の熟練された革鞭が襲う。イリナが気を失いかけると、役人達が水や熱湯を浴びせて、彼女の意識を覚醒させた。

 刑場には医師が控えて、時折、イリナに薬を飲ませたりする。致死を防ぐための処置だろう。


「何故、こんなまどろっこしいことをなさるのです!」


 父の部隊のいる方角から声がした。

 見ると、数人の男達が抗議している。


「あれでは一時しのぎです。市民達の不満の根本は解決しませんし、イリナは宗教裁判にかけるべきです」

「王女も捕らえたのでしょう。あの者の首を捕り、コスモシザに突き出せば──」

「無血の侵略などあり得ません。我々が重んじるのは、コスモシザの民ではなく、チェコラス君主様ただお一人です」


 口々にまくし立てるのは、以前から父の穏便なやり方を非難的に見ている隊員達だ。

 ジスラン・オーキッドは彼らの意見に沈黙して頷くと、赤みがかった金色の髭に囲われた口をゆっくりと開けた。


「……方策は立ててある」

「しかし!」

「リディは、イリナをおとなしくさせるための材料で十分だ。邪推している暇があるなら、コスモシザの戦法と、アイビー家の家系でも調べておけ」

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