
戦場のマリオネット
第2章 終わりなき責め苦
広間ほどある夫人の私室の備え付けの浴室で、私は全てを洗い流した。開きやすい傷口には気をつけながら、髪もすごく久し振りに洗う。リディ様の腰まである髪の方が心配だが、あの夫人は、もしかすれば彼女にも浴室を貸すのではないか。
用意されていた下着をつけて、衣装を掴む。
「…………」
ネグリジェに見えていた布とレースの塊を広げて、今一度、私は夫人との会話を思い起こした。
これを着て、リディ様に会えと?
脱衣所の扉を開くと、女の啜り泣く声が聞こえた。メイドが粗相をしたのだろうか。しかし部屋を見渡しても、皆、ティーセットを準備したり花瓶の花を世話したり、きびきびと働いている。
夫人のいるローテーブルへ近づくと、振り返ってきた彼女の赤い目を見て、私の心臓が一度大きな音を立てた。何故、この人が泣いているのだ。
「よく温まりましたか」
「ええ……」
「座って。こんな時間に女性に勧めるものではないかも知れないけど、どうか無礼を許して下さい」
