
戦場のマリオネット
第1章 辱められた矜持
「何も隠してないわ……服を着せて……」
「お前の愛するリディ王女」
私がその名前を出すと、イリナが顔色を変えた。
構わず私は、寝台の側に屈んで、肉襞に囲われたクレバスを指で広げる。
赤や褐色の肉襞が複雑な濃淡を織りなすそこが、しっとりと指の腹に吸いつく。ぽつんと聳えた突起をつつくと、鈴を鳴らすようなイリナの声が、切なげな甘い気色を帯びた。
「無礼者っ!」
「おとなしくしろ。あの可愛いお姫様が、どうなろうと構わないなら、話は別だが」
「っ……?!リディ様が、……貴女達、何かしたの?!」
「まだ何も。ただ、昨日お前を捕らえた第一部隊の精鋭が、ちょっと王宮にお邪魔しただけさ」
「まさか……」
死人のような顔で震えるイリナの予感は、多分、的中している。
彼女の仕えるコスモシザの、正統な後継者であるリディ・ローズマリーは、この廃屋の上階にいる。
チェコラスとコスモシザの民族的な特徴は、ほぼ変わらない。武装を解いたコスモシザの兵士が人目を忍んで国境を越えて、しおらしい貴族を気取れば、王宮の護衛が彼を疑う可能性は低い。単身敵地へ向かった男は、私の父が命じた通り、王女を連れ去ることに成功していた。
「お前に危害を加えるつもりはない。従ってさえいれば、あの子の安全も保証する」
「もし私が舌を噛み切れば、──」
「彼女がお前の代わりになる」
