
戦場のマリオネット
第1章 辱められた矜持
私の生まれ育ったオーキッド家は、代々、この国チェコラスを統治する公爵家に仕えてきた。
歴史ある血統の彼らに忠誠を誓い、献身する。それを至上の徳としてきた一族の家訓に従って、成人年齢を迎えるより先に、私は今の部隊を任された。
コスモシザの砦を攻めたのは、チェコラス城主が肥沃の土地を所望しているからだ。狭小な国土にも関わらず、コスモシザは豊かな資源に恵まれている。多くの芸術家を育て、文化的にも優れていた。
ローズマリー王朝の治めるコスモシザには王室付きの騎士団があり、独身の、それも純潔の貴族達だけで構成されたその軍隊は、国民達の信仰の対象だ。手始めにリーダーであるイリナを陥落させれば、国民達の不安は煽られ、彼らと同じく神格化されている王家の絶対性が揺るぐ。
私は父から、イリナ・アイビーの名を穢し、コスモシザから神を奪うよう命じられていた。
