
戦場のマリオネット
第3章 懐柔という支配
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イリナを力ずくで従わせるのは難しいのではないか。
そのように母が言い出したのは、私がリディの独房へ数日に一度の訪問をした翌朝のことだ。
食卓テーブルを中心に据えて給仕のメイド達が壁際に控えた広間には、オーキッドの一家全員が揃っていた。朝食皿が下げられて、フサスグリのゼリーとアッサムとセイロンのブレンド紅茶を味わっていた私達は、オーキッド夫人に昨夜の一部始終を聞かされた。彼女は私と入れ違いに、あの廃屋を訪ねていたという。
「イリナさんを、リディさんに会わせて差し上げました。ラシュレも、リディさんには変な気を起こさせないよう注意すべきと言っていたわね。イリナさんだって、いくら鍛えられた軍人でも、過度に弱らせない方が良い」
「ならどうすれば」
「飼い慣らすのよ」
「面白い、聞かせてくれ」
ジスランが興味深げに配偶者を見た。
彼女は続ける。
