
戦場のマリオネット
第1章 辱められた矜持
卑怯者、と叫ぶイリナの頬を打つ。
恨みもなければ裸を見ても特に感じるもののなかった女を多少痛めつけたところで、驚くほど罪悪感も湧かない。
「あまり生意気な口をきかない方が良い」
「…………」
「それとも、お前の国の騎士道精神とやらは、その程度のものってことか」
「違っ……」
四肢の自由を取り返すのも諦めたのか、失念か、イリナはあられもない格好を羞じるのもやめて、声を荒げる。地位や風習など関係ない、生まれた時から仕えることが決まっていたリディ王女を人間として尊んでいる、愛している、と、彼女の主張を要約すれば、ざっとそのようなことである。
「それは面白い」
「何が言いたいの」
「ミリアム、もう良いよ。利き手だけ、拘束も解いて」
「危険では」
私はイリナの頭の近くに身体検査用の器具を置いた。
「今の言葉が本当なら、お前自身の手でこれはねじ込めるな?」
「何っ……」
「お前が自ら脚を開いて、やましいところがないことを証明すれば、王女の方は、下着の中まで調べさせない」
もとより純潔の騎士が、下腹部に何か隠し持っているとは考え難い。
厄介なのは、物を潜ませやすい鯨骨のパニエの方だ。
