
戦場のマリオネット
第3章 懐柔という支配
イリナがチェコラスの修道女なら、教会は本当に神の住処になっていたかも知れない。いや、彼女がチェコラスの修道女なら、その潔癖さゆえに、無言の迫害を受けただろう。
「これで、満足?」
イリナの冷たく落ち着いた声が、攻撃的な音を含んだ。
「私と話して、言いくるめようとしたんでしょう。貴女の目論見は見え透いていた。何故、私がこんな茶番に付き合おうと思ったか分かる?」
「…………」
「私も、貴女と話したかったからよ。話して分かった。やはり貴女とは合わない」
沈着したイリナの横顔を見て、私は背筋が凍る感覚がした。
私が彼女の立場に置かれていたら、彼女のように、相手の欺瞞を見破れるだろうか。
