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戦場のマリオネット

第3章 懐柔という支配



「あ……ああぁ……」


 命と矜持以外は諦めたような彼女が青ざめる根拠は、今更、羞恥ではないと思う。薬草もなしに、破瓜とは違う苦痛が襲っているのだろう。

 口をだらしなく開けて震える彼女の下腹を、私は血まみれの腕で殴打する。


「お"ぇぇっっ!!」


 私はイリナの髪を撫でて、愛液だけ絡みついた方の手で頬を包む。舌を絡めるキスをして、耳朶を転がす具合に舐め回す。


「つらい?」

「はぁ、はぁ……、ぅっ……」

「そういうことなんだ。……こんなになっても、誰も君を救わない」


 イリナの腹をくすぐるように指を這わせて、呼び水を施す手つきで恥丘をいじる。

 二週間前の火傷跡は薄れていたが、傷は瘡蓋になってもすぐに剥かれて、真新しい瑕疵を上塗りされていく。イリナに被せられた長い髪のウィッグを外すと、赤みがかったブロンドの騎士が、本当に戦士だったのか疑るほどみすぼらしい姿で囚われていた。


「君がどうなろうと、君の信じる女神様は、手を差し伸べない。それでも君は、神はいるって言いきるの?」

 したたる赤が、さっきまで彼女の着用していた衣装のそれより綺麗な色をして見える。気絶してくれていたら、少し啜っていたかも知れない。






第3章 懐柔という支配──完──

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