
戦場のマリオネット
第4章 愛慾と宿怨の夜会
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オーキッド夫人は、昼間でも人目を憚らず、私をリディ様に会わせるようになっていた。
彼女が開発を協力している例の薬を打たれた私は、今日も裾を引きずるほどのドレスを着せられて、彼女の部屋に招かれていた。
襟や袖にリボン刺繍の薔薇が散りばめられた、薄ピンクの衣装。
誰よりもリディ様によく似合う色を、私が身につけている。
やはりこの衣装をリディ様の前で着るべきではない、と私が口を開きかけるより先に、ノックが聞こえた。廃屋へ向かっていたメイドが、彼女を連れて戻ってきたのだ。
「おはようございます、リディ様」
「イリナ……ここに来てから、可愛いわね。貴女」
「軍人として、このように不作法な格好でお目にかかることをお許し下さい、リディ様」
「顔を上げて。本当に似合っているから、もっとよく見せて」
オーキッド夫人はメイド達を従えて部屋を出た。
広間ほどの豪華な部屋にリディ様と二人きりになった私は、コスモシザの宮廷に出入りしていたほんの一ヶ月前までが懐かしくなる。
このところ私達への監視がゆるい。ラシュレは私の独房へ来ても嫌味を浴びせて身体をもてあそんで帰るだけだし、彼女らに私は外の状況まで知らされている。こうしてリディ様と二人きりになることも、普通なら密談が懸念されるはずなのに、それもないのは、今のコスモシザの分が相当悪いからだろう。
