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戦場のマリオネット

第4章 愛慾と宿怨の夜会


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 チェコラス軍はコスモシザの砦を越えて、各地に散らばる駐屯地の施設を打ち壊し、武器や兵士らを強奪するという武力行使に出始めた。降伏すれば死は免れると脅迫すると、初めは抵抗する彼らのほとんどが、最終的には従軍か自害を選ぶらしい。


 強襲は民家も対象に入った。


 私達第五部隊は、ローズマリー一家の居城が見える城下町に配置された。

 市民らに棄教と離反を強制して四日目、今日も私はミリアムとクロヴィスを従えて、今しがた血祭りに上げてきた一家の住居に隣接していた一軒家の扉を破った。


「君主チェコラス公爵の命に従い、お前達に選択権を与える。女神トレムリエを涜神し、ローズマリー王朝廃止に同意するか、この家を命ごと引き渡すか、択一しろ」


 民家には、老女と男、十歳前後の少年達が二人いた。

 口々に何かまくしたてる彼女らの脇のテーブルに、ミリアムが女神トレムリエの偽絵を置いた。


「燃やせ。でなけば命はないと思え」

「お許し下さい……私どもは貧しくて、毎朝毎晩、女神様に祈って日々の生活を繋いでおります。女神様のご加護を受けられなくなれば、もっと生活が苦しくなります……」

「その女神とやらを祀っている騎士団が、貴様らの血税を啜ってぬくぬく暮らしているっていうのにか?」


 クロヴィスが男の方を羽交い締めにして、耳に息を吹きかけた。

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