
戦場のマリオネット
第4章 愛慾と宿怨の夜会
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色とりどりの蝶が舞い、花が咲く。チェコラス城の大広間は、春のまま時が止まっているようだ。
昼間とは一変して、城には華やかに着飾った貴族達が集まっていた。
係のメイドに案内されて広間に入ると、公爵夫妻はすぐに私達に気づいて声をかけてきた。
三日後の作戦を聞きつけていた夫妻は私を激励し、アレットには今夜ロランも招待されていることを教えた。
「ご機嫌よう」
新たな客は、イリナを連れた母だった。
「これはこれは、オーキッド夫人。それに……」
「拙宅で預かっている、イリナ・アイビーでございます。公爵様にご相談もなく言い訳の仕様もありませんが、まもなくコスモシザがここチェコラスのものになると思うと、気が急いてしまいまして……」
「ほう」
「イリナはコスモシザの育ちです。豊かな資源や文化について彼女から話を聞いておけば、より楽しみが増すでしょうし、皆さんのご参考になるのではと」
煌びやかな場に相応しい、めかし込んだ微笑みを浮かべる母の隣で、イリナは葬儀にでも参列している面持ちを俯けている。
庭園で別れた時の、活動的な格好ではない。コルセットで締め上げた身体に胸元が大きく開いたアイボリーのドレスをまとって、肩に触れるくらいの髪を後頭部に結い上げた彼女はポイントウィッグを巻きつけた根元にドレスと同系色の花を挿していた。
