
戦場のマリオネット
第4章 愛慾と宿怨の夜会
更けていく夜に相応しい、少し淫らな管弦楽を聴きながら、トリュフやビスキュイで腹を満たした私達は、庭園へ出た。
果実酒一杯で酔ったアレットは、離宮への道中、友人の腰にじゃれついたり私にキスを求めたりしながら、覚束ない足取りだ。
午後十時を回ったチェコラス城では、場所を移しがてら姉妹が濃密に口づけていようと、全く目立たない。夏の植物が寄せ植えされた花壇や林の向こうからは、天体を楽しみながら淫らごとに興じる貴族達の嬌音が、絶え間なくこぼれて出していた。
「この部屋、空いていますわ──…きゃっ、ごめんなさい!」
ノックをしても返事のなかった扉を開けた令嬢が、顔を赤らめて身を翻した。
先客が淫らごとに夢中になっている場合、外からの呼びかけが聞こえず、稀にこうした事故が起きる。
懲りずに次の部屋を求めて離宮内を歩き回った私達は、庭園にいた年長の貴族達を倣ってたまには野外で楽しむのも良いかも知れない、などと次第に冗談を混ぜるようになり、一端外に出た。
つと、七人いたはずの私達は、一人減っていることに気づく。
「アレットどこへ行ったのかしら」
「心配だわ、あの子、酔っていたから……」
意識がなくなるほど泥酔するタイプではない。どちらかと言えば、アレットはこの夜会の雰囲気に酔っていたのが大きいと思う。
しかし他の貴族達も酔っている。酒にも、愛慾渦巻く空騒ぎにも。
つと一年前のことが頭をよぎった私は、植え込みの奥へ入っていった。
