
戦場のマリオネット
第4章 愛慾と宿怨の夜会
「あ、ラシュレ様……」
令嬢達が追ってくるのを感じながら、私は見覚えのある屋根付きベンチに、アレットと同じ姿をした少女を見つけた。
連れがいる。しかし遠目に見る彼女は、目を凝らしても間違いなくアレットだ。
「良かった……あら?アレット……」
「ラシュレ様、待って下さい」
令嬢の一人が私の袖を掴んで引き留めた。離してくれと返す私に、彼女が首を横に振る。他の子達も、彼女に頷いていた。
「ご一緒なのがロラン様なら、心配ありませんわ」
「あの男は──」
「ああ、初対面で、失礼な態度をとられたようですね。アレットはああ見えて殿方にあまり興味がなさそうですから、尚更……」
「でも、あのあとロラン様はとても熱心にアレットに謝罪されて、今では自由恋愛の仲のようだと言われるくらいの睦ましさですわ。ほら、あんなに嬉しそうな顔をして」
令嬢の視線の先を追うと、アレットは嫌がる様子もなく、酒が回っている風でもなく、ロランに笑いかけていた。
聞けば、ロランは一年前の夜を反省して、こんな宴の夜でもアレットにはキス以上を求めないという。堅物な交際を約束した彼らのキスも、友人同士が挨拶するのと変わらない、触れるだけのものだという。
