
戦場のマリオネット
第4章 愛慾と宿怨の夜会
「ラシュレ様は?構わなくて?」
「ごめん、今日は帰るつもりなんだ」
「そう……大事な時期ですものね。お気になさらないで下さい。でも、デボラはこのまま可愛がりましょう。彼女の胸、もうこんなになっていますわ」
悪戯なエレーヌに頷いて、私はデボラを横たわらせた。
ピンッ……と勃起したコットンパールを乗せた乳房を揉み込みながら、赤い口紅などとっくに名残もない唇を食む。
白い珊瑚のような歯列を覗かせて、デボラは甘い息を吐き出しながら、エレーヌの愛撫に戦慄して仰け反って、私のブラウスに皺を刻む。
「ァッ……あぁん!ひっ……あぁぁっっ……」
オードトワレや愛液、汗、体臭──…噎せるような女の香りが充満していた。
あられもない少女の肉体を乱している間にも、私の霞んだ意識の片隅は、アレットばかりを気にしていた。デボラやエレーヌを口説きながら、その実、私は何度もアレットを呼ぶ。
突然、ノックの音がした。
あまりに卑猥な光景の中、着衣しているのは私だけになっていた。
私は名残惜しげにデボラへのキスと愛撫を止めて、扉へ向かった。
「畏れ入ります、ラシュレ様」
そこにいたのは、さっきこの部屋を清掃していたメイドだ。
「奥様がお呼びです。お部屋でお待ちになっていますので……」
「えーっ。公爵夫人、またラシュレ様を独占なさるの?いくらお気に入りだからって……」
「公爵夫人が相手なら、私達、敵わないわ。チェコラス民は、貴族でも公爵様ご一家には逆らえないもの」
令嬢達に詫びて、私は部屋をあとにした。
城へ戻る途中、さっきの植え込みの向こうを通りかかると、アレット達の姿はなかった。
広間の近くに母を見かけた。
彼女の方は、イリナが婦人達に連れて行かれたきり戻ってこないと心配していた。いくらイリナがコスモシザの騎士でも、公爵の城で物騒なことを考える貴族はいないだろうが、迷っていると可哀相だと、気もそぞろだ。
私もアレットがはぐれたことを伝えた。
