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戦場のマリオネット

第4章 愛慾と宿怨の夜会



 チェコラス夫人の唇が、私のそれに重なってきた。みずみずしく甘ったるいホワイトローズとは違う、黄金色の温室に咲く芳しい薔薇を彷彿とする夫人の香りが私を包む。

 角度を変えて繰り返すキスは、浮かれた夜会で貴族達が交わすのとは別物の味がする。


「やっぱり……貴女は素敵。チェコラスの美しい貴族は皆、私のものであって欲しいけど、男の子は成人すると、大抵ごつごつして臭くなってしまうから……」

「意地悪なご冗談を」

「けれどラシュレは違う。いつまでも美しいまま。私が貴女のような人を手許に置いて愛でていられるのは、公爵様のご威光のお陰ね……。コスモシザの騎士が淑女のために貞節にこだわるなら、私に処女をくれた貴女が私の騎士ということかしら」

「昔のお話です」


 私は夫人の片手を持ち上げて、指に吸いつく。手と手を組み繋ぎながら、指の隙間にもキスを散りばめていく。

 夫人は小さく身をよじりながら、私の後頭部に片腕を回す。鼻先をすりつけてきて、息の触れ合う距離でささめく。


「言葉だけじゃ足りないの。……ラシュレ、もう一度、貴女を抱かせて」

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