
戦場のマリオネット
第4章 愛慾と宿怨の夜会
「だけど、これ……十字?」
「痣か何かあったように見えるわ」
「関係ないとは思うけど、オーキッド夫人やアレット様にも良く似たものがなかったかしら」
「アレット様は目立つわね。何せあの場所だから……」
見ないで。神聖なこの十字は、下劣な目に晒して良いものではない。
ただ、私がこの場所にしるしを願ったのは、彼らが目をつけた通り、生まれつきの欠点があったからだ。
女神を宿すための身体には、相応しくない痣。まるでトレムリエ以外の何かに私を繋いでいるようで、昔から見るのも嫌だった。だから十字で上書きしてくれるよう願った。
「面白いわ。焼いてしまってはどうかしら」
婦人の一人がそう言って、ライターを持っている紳士はいないかと呼びかけた。
彼らはすぐにライターを出す。赫々と燃える小さな焔が、私の太ももに近づく。
「いやっ……やめて……お願いします!」
「皆さん、この女を押さえて。ああ、けれど大火傷させては、夫人に合わせる顔がないわね。煙草を使って、十字だけ上手いこと焼きましょうね」
「いやぁ……っっ」
