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官能マシン

第1章 官能マシン

「お客様、これは大変お買い得ですよ」

 冷やかし半分で立ち寄った電気店の電話機売り場。
 信一は、一方的に説明を続ける店員に、ほとほと嫌気が差していた。

 店員がパクパクと動かす唇をぼんやり眺めながら、信一は今日あった出来事を思い出していた。

  *

 退社間際の5時前のことだった。

 ピピーピピーピピー。

 例の耳障りな呼び出し音が鳴る。

 デスクでパソコンに向かう信一とは対照的に、今日もOL一年生の慶子のポケベルが鳴っていた。

 どうせ、またデートの誘いだろう。

 慶子は小さな液晶画面を眺めるなり、ゲラゲラと大口を開けて笑い出した。

 信一は、そんな慶子を見て、ただただあきれていた。

「近ごろの女の子は、どうなってるんだ?」

 信一にとって、慶子はまさに新人類だった。

 ポケベルは確か受信専用だったはずだ。
 電話のようなテンキーなど、付いていない。

 不思議に思った信一は、慶子に尋ねた。

「……ポケベルなのに、なんでテンキーが付いてるんだ?」

「えっ、係長、知らないんですか?」

 慶子は得意げに端末を見せた。

「これ、新製品なんですよ。電話もできるんです!」

 そう言って、慶子は周囲をちらりと見回した。

 そして、紫色の唇と、まるで死に化粧を施した病人のような生気のない顔を、信一へ静かに近づける。

「これなら電話みたいに声を出さなくても、文字だけで会話できるんです」

「へえ……」

「だから、ちょっとエッチな話をしても、誰にも聞かれないんですよ」

「エ、エッチな話?」

 信一は思わず聞き返した。

「そうですよ」

 慶子はニヤリと笑った。

「今はフリーセックスの時代ですよ、係長」

「そ、そうなのか?」

「それに、内緒話とか秘密の話って、刺激的じゃないですか?」

 慶子は長く尖った舌を、ねっちょりと出した。

 その舌先がゆっくりと弧を描き、上唇をなめ回す。

「たまらないんですよねえ。もう、燃えてきちゃう」

 うつろに遠くを見つめる慶子の目は、どこか潤んでいるように見えた。

 信一は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。

 そのとき――

 ガタン!

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