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官能マシン

第1章 官能マシン

 三十五歳になり、十年前と比べれば肉体的な魅力が衰えたことは否定できない。だが、不思議なことに、今の純子のほうが信一にはずっと素敵に思える。

 肉体は変わっていく。

 しかし、人を愛する気持ちまで同じように変わってしまうわけではない。

 年齢を重ねるにつれ、仕事や生活のストレスが増え、夫婦のSEXにも微妙なずれが生じていた。

「しょせん、機械が作り出したものは機械でしかないよ。最初はよくても……終わったあとのむなしさが大きすぎる」

 信一は店員にこの携帯電話は必要ないと告げ、壊れてしまったマシンを返した。

 機械が作り出した虚構とはいえ、妻以外の女性とSEXをしたことに、信一は少なからず罪悪感を覚えていた。

「そうですか。でも、相手は機械ですよ。そんなに難しく考える必要はないと思いますけどね」

 店員は、まだ諦めていないらしい。

「このマシンは、一人暮らしのお年寄りや若者をターゲットに開発された画期的な製品なんです。三人で楽しむこともできますし、いろんな男女との複合SEXだって、乱交パーティーだって自由自在です。刺激的でしょう?」

「……もういいよ。返すって言ってるんだから」

「まあまあ、そうおっしゃらずに。せっかくですから、今晩あたりもう一度試してみたらいかがです?」

 店員は、にこにこと笑った。

「装置一式を組み込んだ簡易官能マシンもあります。周辺機器も取り扱っていますから、すぐにお持ち帰りいただけますよ」

「やけに熱心だね」

 信一は店員をじっと見た。

「君は試したのかい?」

「ははは……私ですか?」

 店員は肩を揺らして笑った。

「もう、すっかりはまっちゃいましたよ」

 そう言うと、店員は上着の前を大きく広げた。

 信一は目を疑った。

 何と、上着の内側には官能マシンの装置がぎっしりと吊り下げられていた。

 上着だけではない。ズボンにも、官能装置の周辺機器がいくつも埋め込まれているらしい。

「実はですね……私の分身にも、特注の官能装置を巻いているんですよ」

「……分身?」

「へへへへ。お恥ずかしい」

 店員は照れたように笑った。

「今じゃ仕事中もこれを使っちゃって、もう、いつもイキっぱなしなんです。最近ではすっかりやつれてきちゃいましたよ」

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