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ぼっち─選択はあなたと共に─

第1章 彼女の選択

 「心から祈っているよ……か」

 ヒカリの姿を見送ったあと、久遠は一人呟く。

「ほんと、あなたがそんなこと言うなんて珍しいわね、久遠」

 久遠の背後からカツカツとハイヒールを鳴らしながら、白衣を着た女が近づく。

「天野くんか」
「つくしって呼んでって、いつも言ってるじゃない」

 そう言うと、女は久遠の首に手を回し背後から抱きしめた。

「君には虎生という恋人がいるだろう」
「虎生は元恋人よ。私が今愛してるのは久遠、あなたよ」

 つくしはそう言うと、久遠の頰にキスをした。

「……君も本物に似てきたな」
「ふふっ、だって私は天野つくしのコピーだもの」

 そんなつくしの顔を、久遠はじっくりと見つめる。

「魂をデータ化すれば、どれだけでもコピーができる。そして記憶を作るのも削除するのも……」

 つくしの顔が近づいてくる。
 そして唇を割って、舌が口内に入り込んでくる。

「んっ……」

 この体温も感触も全て本物のように味わうことができる──それはまるで現実世界で生きているかのように。

「お願いだから、私を削除しないでね。あなたを感じられるのは、ここでしかできないんだから」
「……」

 つくしの言葉が心に引っ掛かる。
 コピーというものはたまに本物より容赦ない、と久遠は苦笑した。

「ああ、まだ消さないよ。まだ……研究は終わってないからね」




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