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まこな★マギカ

第14章 第九ノ一章


「えっ、いや――『どんぐらい』って……」カナメはそう言って、おもむろに時計を見ながらそれをいじり始めた。それを見てこの男にそれを聞いたのが間違いだったかもしれない、そんな風に思い始めていた。するとカナメは自信満々にこたえた。「でも、まあ、二分と34秒、ってところっすかね~、ざっくり言って」

「いやいや、ざっくりじゃねぇだろが、全然! 正確過ぎんだろ――だいたいなんでそんな事がわかるんだよ?」

「いや、だって、時計で測ってましたから俺」と言ってカナメは腕を折り曲げて、手首に巻かれた腕時計を見せてきた。そのシルバーの時計はライトを反射させて光沢を放っている――なんだかそれが無性にいらっとした。

「冷静沈着かよ!」俺は言う。「もっとそこは焦れよ!」

「いやいや、ちゃんと焦ってましたよ、俺だって――」カナメは平然と言った。「焦りながら測ってたんすよ」

「うぬは救命救急ドクターかよ!」

――つうか、たったのそれだけかよ。しかも、そのあいだになにか夢のようなものを見ていたはずなのに、でも内容がまったく思い出せない。思い出せそうなのに、思い出せない――夢あるあると言われれば、それまでなのかも知れない。だけれども、その内容が何故か無性に気になっていたのだ。

「あ、そう言えば、ゆうきさん――」それを思い出そうと頭を抱えていると、カナメが訊いてきた。「さやかちゃんは大丈夫なんすか?」

「――え? ああ、さやか?」俺はカナメに言われて思い出した。そう言えば、さやかの事をすっかり忘れていたのだ。「大丈夫かはわかんねぇけど……つうか、あの伝言は伝えてくれたのかよ?」

「ええ、ちゃんと言ってきましたよ。でも、さやかちゃんに聞いたんすけど、シャンパン下ろすのって、なんか違うみたいっすね――」そこで何かを思い出した様子でカナメが興奮しながら言った。「って言うか、あれって、早乙女和子っすよね! ゆうきさんどこでキャッチしたんすか?」

「いやいや、キャッチじゃねぇよ。さやかが連れてきたんだよ、和子は」

「まじっすか?」さらに興奮しながらカナメが言う。「最近、ゲス不倫で離婚した――って言う……あの早乙女和子が、まさかうちの店に来てるなんて。ゆうきさん、凄いじゃないっすか――て言うか、今日抱くんすか?」

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