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まこな★マギカ
第15章 第九ノニ章
20番テーブルに向かいながら、俺は、その深くてもやもやとしたジレンマの中で行ったり来たりを繰り返していた。
「えっ、ゴールド――ですか?」するとふいに後ろからタツヤの声が聞こえてきた――そう言えば……そこで気がついた。タツヤは、10番テーブルと20番テーブルのちょうど真ん中の奥にある、厨房に向かっている最中だったのだ。「いえ、あるかどうかわかりません。一応確認してみます」どうやら、タツヤは別の内勤と話している様子だった。内容からしてドンペリのゴールドの事を話しているのがわかった。そして14番テーブルを通り過ぎようとしていた時に再びタツヤに呼び止められた。「ゆうきさん――」
俺は立ち止まって振り返り、タツヤに向かって訊ねた。「どうしたんだよ?」
タツヤがすぐ後ろでこたえる。「ピンドン飲んだら、すぐに27番に戻ってもらえませんか」焦っているのが、その口調からひしひしと伝わってきた。
「はっ、なんでだよ?」タツヤの言葉に少々戸惑いながら俺は訊ねた。
「まこなさんが『ゴールドをおろす』って言ってるみたいでなんで――」
「まじかよ……」俺は言葉を失いかけて、それをこらえるようにしてタツヤに言った。「いやいや、だとしても――すぐに、ってのはさすがにきびしいだろ。それはあまりにも――客に対して――失礼じゃねぇか」
するとタツヤは言った。「わかりました。なら、そのタイミングを見計らって、僕か、もしくは、他の者を席に行かせますんで――その時はお願いします」タツヤは言い終わると、そのまま真っすぐに厨房に向かって歩いていこうとした。
その姿を見て俺はタツヤを呼び止めた。「タツヤ――でも、ゴールドなんてあるのかよ?」
「それは分かりませんけど、無かったらプラチナでも良いって言っているらしいんですよ」
「そっか……」それ以上はなぜか追及する気にはなれなかった。「わかったよ」とだけこたえて俺は14番テーブルを超えてパーテーションを左に曲がった。
ホールの中はドンペリコールによっていつにもまして騒然としていた。20番テーブルに向って歩きながら、俺はまこなに対してなんだかとてつもなく謝りたい、そんな気分になっていた――それは自分に対して嫌悪感さえ抱くほどに……。
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