テキストサイズ

まこな★マギカ

第15章 第九ノニ章


20番テーブルに着くと、周りに座る従業員の数が先ほどよりもあきらかに少なくなっていた。シャンパンコールやその他もろもろのボトルがあちこちの席で下ろされているせいだろう、それはすぐにピンときた。

さやかを見ると、これと言って特に変わったところは見られなかった。顔を赤らめてはいるけれども、相変わらずの笑顔を見せて周りのヘルプと楽しそうに喋っている。ただし、目の前のテーブルの上には、先ほど飲んでいたカクテルのグラスではなく、ロックグラスが置かれている。その液体の色から察して、中に入っているのは、ヘネシーかハーディのどちらかだろう。それを見て安心感とともに、又してもまこなに対しての罪悪感がこみ上げてきた。

なんとなくその感情をぶつけるように、まず、和子に謝った。「和子さん、すみません、遅くなってしまって……」

「あら、ゆうきちゃん、おかえりなさい。いいのよ、気にしなくても――ゆうきちゃんが人気者なのは、さやかに聞いてちゃんとわかっているんだから。それよりも――」和子は言って、さやかの方をちらっと見た。「さやかが寂しがっていたわよ」

「ちょ、ちょっと――和子さん、なにをいきなり……」すかさずさやかが反論する。「わたし別に寂しがってなんか……」

和子はそれを見て、含み笑顔を見せた。「うふふふっ……そうだったかしら?」

「もう、わたしって、まるで痛い客みたいじゃんよ」さやかは赤い顔をさらに紅潮させながら和子に向かって言った。

そして俺はさやかにも声をかけた。「でも悪いな、さやか、だいぶ遅くなっちゃって……」

「だから、ゆうきも――そんなの気にすんなし――」さやかはいつもの笑顔を俺にも向けた。「それよりも、約束どおりちゃんと潰れないで待ってんたんだから」

「ああ、なんかそうみたいだな――」

「ねぇ、ゆうきちゃん――ちょっといい?」さやかにこたえていると、和子が俺に声をかけてきた。それから和子はさやかに向かって訊ねた。「さやか、少しだけゆうきちゃんにお話しがあるんだけれども――平気?」

「もう、だから和子さん――」さやかは苦笑いを浮かべている。「そんな事、いちいちわたしに確認しなくてもいいってば……」

「あら、ごめんなさい、だってあの時の……」とそこで和子ははっとした様子で言葉を切り、俺に手招きした。「ゆうきちゃん、ちょっと聞きたい事があるんだけど」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ