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まこな★マギカ

第7章 第五ノ一章


杏子が言い終わる前に、俺は丸椅子を引いて二人の間の前方に腰をおろした。

椅子に座ると杏子がさっそく訊いてきた。「何飲むんだよ、ゆうきは。それとも、先にこれ喰うかい?」

「そうっすよ〜ゆうきさ〜ん。これゆうきさんの為に頼んだんすから〜。早く食べてくださいよ〜」と横からカナメが言う。

すると杏子が「うるせー。お前は黙ってろ」と言ってカナメをぐーで殴った。

パチンッ、という音とともに、「いたいっ!」 というカナメの悲鳴が聞こえて、そしてその後、顎のあたりを両手で押さえながら「痛いだろ、杏子〜」と情けない声を出すカナメ。

そんなカナメに向かって杏子が言う。「俺がゆうきと喋ってんだろ――お前は引っ込んでろ!」

「はひ。ごめんなさひ」それからカナメは口を閉じた。

「で、何にすんだよ、ゆうきは?」

「え、じゃあ、どうしよっかな」と言いながら杏子のグラスを見るとグラスにはビールが注がれていた。「じゃあ、俺もビール貰ってもいいかな?」

「当たり前だろ」杏子は俺にこたえると、隣に座っているカナメに向かって言った。「おい、カナメ、ビール持ってこいよ」

「え〜俺が、かよ〜?」

「おまえ以外に誰がいんだよ。つーか、お前にはそれぐらいしかできねぇだろ」と杏子が物凄いけんまくでカナメに言う。

それを見かねて、とっさに俺は二人の間に割って入った。「あ、杏子。まだここにあるから、取りに行かなくてもいいぜ」

「いや、せっかくゆうきが来たんだから、冷えたやつがいいだろ」と杏子が俺を制してから再びカナメに言った。「ほらボンクラ、さっさと行って来い」

「はひ。わかりまひた」カナメはしぶしぶ立ち上がり、足元をふらつかせながら厨房の方へと歩いていった。

カナメは既に酔っていた――いや、酔いすぎていた。もはや酩酊泥酔だった。さっき恭介さんと話しているあいだに、あの短時間でこんなに迄なるものかよ、と思うぐらい盛大に酔っていたのだ。

何飲んでんだよ、あのバカ――カナメのグラスに視線を走らせると、そこには空になったタンブラーとビール瓶が一本づつコースターの上に置かれていた――げ、こいつ、鏡月をビールで割って飲んでんのかよ? しかもフリーハンドで……。なんつう飲み方してだよ。 

愕然としながら俺は杏子に訊ねる。「あ、あいつ、大丈夫なのかよ?」

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