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まこな★マギカ
第7章 第五ノ一章
思わず立ち止まってその光景を眺めていた。あまりにも無謀で、あまりにも勇敢なその新人の姿に、入ったばかりの頃の自分を思い出さずにはいられなかったのだ。そしてその姿に、まるで背中を押されるようにして再びホールの中を歩いた。
20番テーブルはVIPルームなだけあって、他の客席よりも三段ほど高い位置にある。それに加えてパーテーションもゴージャスで、席に着くと既にそこには数人の従業員がテーブルを取り囲むようにして座っていた。
俺は勢いよくテーブルの前に立つと「初めまして。ゆうきと申します。大変お待たせいたしました」そう言って深々と頭を下げた。
するとソファーの方からなにやら聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。「きゃはははっ……丁寧かよ」
あれ、この笑い声って……。どっかで聞いたことがあるような――そう思いながら、おもむろに顔をあげると、目の前のソファーには、女が二人並んで座っていた。
その右側に座っている女が、俺と目が合うなり言った。「やほ、ゆうき。そっこーで来ちゃった」
俺は曖昧な表情を浮かべながらまじまじと彼女の顔を見た。「あれ、きみって……?」先程よりも微妙に顔が赤らんでいて、そのうえサングラスとあのメガホンを外していた。だから、すぐにはわからなかったのだ。
え? ひょっとして、さやか、かよ……?
「きゃははははっ……きみとか言うなし」さらに笑いながら右側の女が言う。「さっきカラ館の前で会ったばっかじゃん。もう忘れたの?」
「え、もしかして、さやか――さん?」
そう訊ねると「きみの次はさん付けかよ!」と笑いながら彼女はこたえた。
そこで俺はようやく思い出した。「いや、だからあれは双子の弟やねん」
「もう遅いわ!」とつっこむさやか。「そんな所につっ立ってないでゆうきも早く座んなよ」
「――えっ、あ、じゃあ失礼します」
そう言って、目の前に座っていた従業員のあいだに割って入って丸イスを引こうとした、その時、「ねぇねぇ――」と言って、さやかが自分のすぐ隣のソファーを左手でポンポンと叩いた。「あんたはそっちじゃなくて、こっち」
「ふぇ?」
「だからあ、もうゆうきの事指名したんだから」とさやかが言う。「もしかして、そっちの方が良いわけ?」
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