先輩!彼氏にしてください!
第8章 危険人物
「…っ……キスくらいっ…キス…く…らい…」
そう言い聞かせている間も胸がズキズキと痛む。
ほのか先輩は押しに弱い…だけだ…。
きっとあいつに無理矢理されただけなハズ。
………て、ちょっと待て、それって僕も同じじゃないか…?
い、いや、でもほのか先輩と何度かしたキスのうちの一回は、ほのか先輩からしてきたし…!
同情だなんだって言ってたけど…でも…僕の方が────
「────────………」
ごちゃごちゃと自問自答しながらほのか先輩を眺めていたら、見たこともないほど、楽しそうに微笑んでいたので思わず目を見開いた。
「…………笑ってる…」
あれ……?
ほのか先輩って、僕にあんな風に笑ってくれた事あったっけ……?
────────── キモチワルイんだけど!
僕の前の先輩は、いつだってそう僕を罵倒して…イライラしてて、怒ってて…
あー…でもよく考えれば当たり前…か。
僕のしてることは先輩にとっては迷惑なことだから…。
無意識に胸の辺りをギュッと抑える。
あー……
だめだ、あの可愛い笑みを向けられているあいつがとてつもなく羨ましい。
やっぱり僕だってほのか先輩に微笑まれたい。
同じように笑っているアラタ先輩を見ながら、嫉妬心だけが募りに募る。
取られてしまう。そんなの嫌だ。
どうしようどうしよう…
「お、おい…ホマレ? お前、大丈────」
「──── ほのか先輩!!!!」
気付いたらどうしようもなくなって、僕はその場で先輩の名を叫んだ。