先輩!彼氏にしてください!
第8章 危険人物
ま ず い
嫌な予感がして、弁解しようと思うけど、考えれば考えるほど言葉は浮かばないし、そもそも『弁解』って何よ、とかそんな思いが頭をぐるぐるとする。
「……なに…してるんですか……」
「あ、あのっ……これは────」
「───── 惜しかったなぁ。いいところなんだから邪魔すんなよー」
敢えてなのか、空気を読まない新先輩はそう言いながら、谷川くんに向き直る。
けど、谷川くんは新先輩ではなく私の方をキッとキツく睨み付けた。
「本当にっ……ほのか先輩って流されやすいですよね」
「………は?」
「押しにも弱いし…っ」
息を整えながら、谷川くんは私と新先輩に近付く。
そして、今度は苦しそうな顔をしながら、両の拳をギュッと握っていた。
「やっぱり僕じゃなくて…新先輩がいいんですかっ……」
「た、谷川くん…ちょっと落ち着い──」
「──── 落ち着けるわけないです!!!」
突然大きな声を出した谷川くんは、その綺麗な瞳に涙をいっぱいに溜めている。
「そうですよね……っ、新先輩の方が明るくて、みんなに慕われてて…スポーツも出来て…っ…そのくせ、僕は暗いし、ほのか先輩の嫌いな…っ…泣き虫だし……っ」
本当に本人が言うように暗いムードの谷川くんは、ネチネチと言葉を続ける。
泣く男が嫌なのは本当なんだけど、何故かさっきから、泣きそうな谷川くんを見ていると心臓がギュッとなって苦しい。