先輩!彼氏にしてください!
第8章 危険人物
「でも……分かっててもやっぱりどうしようもなく好き…なんです」
「……………」
「誰にも取られたくないっ……」
悲痛な叫びに、やっぱりバクバクと心臓がうるさい。
「……お願いだから…っ…僕を選んでくださいっ……」
手の甲で涙を拭った谷川くんを見ながら、新先輩が固まったまま動かない。
びっくりして、かつ困っているんだと思う。
まぁそれも無理もない…よね。
でも、なんかそんな新先輩を見るのは初めてな気がして、何だか安心したような、なんとも言えない気持ちになった。
ふわふわして行き場を失った私の気持ちを、今ならどうにか昇華出来るかも知れない。
「あの……新先輩」
「……ん? あ、あぁ」
「えーっと…谷川くんの事は置いておいたとしても……私、やっぱり新先輩の彼女には、なれません」
少し無理に笑いながら、そう答えると、脇で谷川くんがハッと息を飲んだのが分かった。
先輩の彼女になりたいと、そう願った時もあった。
それは間違いない。
でも、もうその枠は埋まっていて…
キスしてくれた後も、それは変わらなかった。
「…………遅すぎた?」
新先輩のドンピシャな言葉に、私は少し目を見開いた後、ゆっくりと頷いた。