先輩!彼氏にしてください!
第8章 危険人物
しんと静まり返った生徒会室の中、谷川くんに声を掛けようとしたところで、突然谷川くんが脱力して床に膝をついたので、「え」と私は声を上げた。
「ちょっと…っ…大丈夫?」
「ひとまず……最悪の事態は回避できたって…事ですよねっ…」
何も答える間もなく、「はぁぁああぁぁぁ〜〜〜!」と声を上げた谷川くんは、瞳を涙で濡らしたまま、ムッとした顔で私のことを見つめた。
イケメンの、涙目の…しかも上目遣いはかなりの破壊力があり思わず「うっ…」と声を詰まらせる。
すると、谷川くんは「ほのか先輩のバカっ!」と叫び出した。
「………な、なに、いきなり」
「浮気者!!!」
意味が分からない。
なんで谷川くんにそんなこと言われなきゃいけないのか。
「何のどこが浮気なのよ」
「僕という人がありながらっ…」
「だからっ…! 別に谷川くん彼氏じゃないし」
「ほんとにっ…不安で不安で……っ…もし、ほのか先輩が取られたらって思ったら僕…」
情けなく言葉を続ける谷川くんに、私は呆れながら溜め息を漏らす。
新先輩とは全然違う。
こっちが不安になる隙なんか一切与えずに、ずーっと私への想いをペラペラと…本当に粘着質に言い続けている。
私の為すこと全てに、彼は翻弄され、こうしてすぐに涙を流すし……