先輩!彼氏にしてください!
第4章 モデルをお願いします!
「ちょーーっと谷川くん? そんなに身を乗り出したら落ちるよ……って、大丈夫!?」
早坂先生が隣で何か言っているけど、ただの雑音としか認知できない。
今五感は出来るだけ目の前のほのか先輩を感じ取ることに使いたい。
眉間に皺を寄せたほのか先輩は、少し目を見開いた後、チョンチョンと自身の鼻先を指差している。
どういう意味だろう。
何とか読み取ろうと必死になるけど中々分からずに首を傾げながら、僕も先輩と同じように鼻先をチョンチョンと指差したら、先輩は『そう』と言わんばかりに頷いた。
分からない。
分からないけど、いちいちの仕草がかわいい。
解明しようと頭をフル回転させていると、突然強く後ろに引っ張られて体がよろめいた。
「つっ……なんですか」
振り返ると先生がいる。
先輩との時間を阻まれて、不機嫌に早坂先生に尋ねると、早坂先生はティッシュの箱を僕に差し出した。
「鼻血、すごいよ」
「……鼻…あー…」
先輩が言ってたのはそういうことか。
ティッシュ箱を受け取って、適当に何枚か掴みそのまま鼻に当ててパッとティッシュを見ると、確かに真っ赤な液が大量に出ていた。
とりあえずティッシュで抑えながら、再びプールを覗き込む。
が……
「いない……っ…」
もう上がってしまったんだろう。
もっと水着のほのか先輩を見ていたかった。
はぁ、とその場にしゃがみ込んで項垂れると早坂先生は「ほぉぇ…」と腑抜けた声を出した。