先輩!彼氏にしてください!
第5章 彼氏までの道のり ─ 序 ─
「完璧で………見ただけで体が痺れるような感覚がしたほどです」
呆れた顔をしてるほのか先輩に「うそじゃありません!」と凄む。
どうして分かってくれないのか。
ほのか先輩の素晴らしさを、当の本人が理解してくれないことがこの上なく苦しい。
「これ以上言葉で説明出来ないです…っ……でも、あの日は間違いなく人生で一番、衝撃を受けた日で、人生で一番幸せで、人生で一番貪欲になった………っ…そういう日なんです」
涙が溢れそうになって咄嗟に俯く。
「だから……っ…『ただの一目惚れ』なんて言わないでください」
泣くなんて絶対にダメだ。
ほのか先輩は『泣く男が嫌い』なんだから。
先輩に見合うべくしてる努力がまた無駄になってしまう。
「谷川くん…」
「……泣いてませんから…っ」
顔を手で覆ってなんとか涙を拭う。
靴の音が近付いてくるのが分かる。
ダメだ。今顔を見られたら泣いてるのがバレてしまう。
再び椅子に座り込んで顔を覆いながら下を向いた。
「ねぇ、谷川くん」
「い、今近付かないでください……っ」
「………ごめん」
「────────…」
また頭を撫でられた感覚に、僕は涙を拭いながらも目を見開く。
そして、ゆっくりと顔を上げて目の前で立っている先輩を見上げた。
「分かったから」
「………先輩は…何も分かってない、です」
こんなに訳が分からないほど好きな気持ち、簡単には分かって欲しくない。